【Colum / 税金】税制改正動向「国外の中古不動産による節税スキームに規制?」

2016-11-14

会計検査院は7日に発表した平成27年度の決算検査報告において、富裕層の一部が国外にある中古不動産を利用して行っている節税策の実態を明らかにし、現状の問題点を指摘した上で、財務省に対して国外に所在する中古の建物に係る減価償却費のあり方を検討するよう求めました。
つまり、検査院は、「国外に所在する中古等建物については、簡便法により算定された耐用年数が建物の実際の使用期間に適合していないおそれがある」と指摘し、財務省に対し見直しに向けた検討を要請したということです。

会計検査院 検査報告 http://www.jbaudit.go.jp/report/new/index.html

問題の節税策の内容は下記の通りです。

中古の減価償却資産の減価償却費の計算では、法定耐用年数に代えて、

(1)法定耐用年数の全部を経過した中古資産であれば「法定耐用年数の100分の20」
(2)法定耐用年数の一部を経過した中古資産であれば「法定耐用年数―経過年数+経過年数の100分の20」

を耐用年数とする簡便法を用いることができます。

法定耐用年数の全部が経過した中古資産で簡便法を用いると、住宅用の建物の場合の構造別の耐用年数は法定耐用年数が22年の木造等なら4年に、38年のれんが造等なら7年に、鉄筋鉄骨コンクリート造等なら47年が9年となります。
つまり、中古住宅等はかなり短い期間で減価償却ができることになります。
この方法は、国外に所在する建物についても国内と同様に適用されます。
他方、国内の建物、特に戸建て住宅は築後20年までで市場価値が大きく低下するとされていますが、米国や英国では中古住宅と新築住宅との価格差は小さいのが現状です。
このため、国内の中古住宅等よりも市場価値の低下しにくい海外の中古住宅等を購入し、賃貸料収入を上回る多額の減価償却費を計上。不動産所得に損失を発生させ、給与所得等の総合課税に属する他の所得と損益通算を行うことで総合課税に係る所得金額と所得税額を減少させるというものです。
減価償却費が計上できなくなると、その物件は売却します。
減価償却費の累計額は物件を売った際の譲渡所得の金額の計算上、取得費から控除されるため、譲渡所得はその分増加するものの、総合課税(最高税率は45%)に比べて低い分離課税の税率(所有期間が5年超なら15%)が適用される場合には全体として所得税額の負担が減少します。

このスキームを利用した源泉所得税の還付スキームは以前から問題視されていました。
このスキームを利用した場合、年収5,000万円、1億円の方の源泉所得税の「全額」が還付されることになる為です。
今回、このスキームに規制がかかる可能性が高いわけです。
検査院の指摘はその後の税制改正に結びつくことが多い為、本件に関する動向が注目されます。

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